相続・事業承継対策

相続・事業承継対策

信託を活用した相続対策

(3)信託の形態

信託の形態は、従来は次の1、2の2つしかなかったが、改正により、委託者と受益者が同一である信託や受益者の定めのない信託、事業信託など多様な信託が可能になったことから、今では、3から8のような使い方をすることもできるようになっている。

1. 自益信託

委託者が受益者である信託(例:貸付信託、投資信託)

2. 他益信託

委託者が受益者でない信託

3. 自己信託
1. 内容

委託者自身が受託者となる信託で、委託者が自己の財産を他人のために管理・処分等 を自らすべき旨の意思表示を一定の手続き(公正証書等)により行う信託(信託宣言ともいう)。

2. 使い方

(例)
法人のある事業部を自己信託(自分に信託)する。
(特徴)
分社と同様の効果が、課税関係なく、しかも簡素な手続きですることができる。

4. 目的信託
1. 内容

受益者の定めのない又は定める方法の定めのない信託(信託の存続期間は20年を超えることができない)。

2. 使い方

(例)
福祉や子育て支援に信託を設定する。
(特徴)
非営利活動やボランティア活動の民間支援資金の受け皿とすることができる。

5. 事業信託
1. 内容

委託者が信託前に有していた債務を受託者に信託し、かつ、信託財産をその債務の引当てとすることができる信託。

2. 使い方

(例)
法人のある事業部を事業信託(他人に信託)する。
(特徴)
後継者がいないような場合に、第三者に事業信託すれば、収益だけ受け取ることができる。

6. 遺言代用信託
1. 内容

委託者の死亡を始期として受益権を取得又は信託財産に係る給付を受ける権利を取得する受益者(死亡後受益者)について定めのある信託。

2. 使い方

(例)
遺言の代わりに生前に信託をする。
(特徴)
自分の死後における財産処分を生前に確実に行うことができる。

7. 遺言による信託
1. 内容

以前からあった信託だが、受託者が円滑に引き受けができるよう、①遺言に受託者の指定の定めがあるときは利害関係者による信託の引き受けを催告できる、②受託者の定めがない、又は受託者死亡等のときは利害関係者により裁判所へ選任申し立てができることとなった。

2. 使い方

(例)
遺言で特定の者に財産の管理・処分等を信託する。
(特徴)
自分の死後における資産承継と財産管理、処分を自由に指定できる。

8. 後継ぎ遺贈型の受益者連続信託
1. 内容

受益者の有する受益権がその受益者の死亡により消滅して他の者が新たな受益者として受益権を取得する旨の定めのある信託。信託期間は、信託設定時から30年経過時以後に現に存する受益者が死亡するまで、又は受益権が消滅するまでとされている。

2. 使い方

(例)
遺言代用信託もしくは遺言による信託により、財産の承継を2代以上にわたる指定をする。
(特徴)
2代以上にわたる財産の承継を確実に実行させることができる。