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上手な生前遺産分割の進め方 (5) 納税を考えた生前遺産分割

いまや、相続対策は争続対策とこの納税資金対策がメインの対策となっている。争続対策は、この生前遺産分割を活用していただければ、もめることもないであろう。

とすると、後は、納税資金対策を講じておけばよいことになる。それには、次のようなことを考えておこう。

① 生命保険の活用
先に、生命保険の生前遺産分割についてふれたが、生命保険は納税資金対策としても活用できる(現金が手元に入る)ので、そのあたりも考えて生前遺産分割をしていただきたい。生命保険を納税資金対策として活用する方法には、次のような方法があるが、それぞれにあったものを活用するとよい。

イ 非課税規定の活用
生命保険金は、遺族の生活保障という観点から、法定相続人一人につき500万円が非課税とされている。
この非課税を活用するのとしないのとでは、次のような差が出る。

(設例)
・被保険者  80歳男性
・相続人    子供3人
・相続財産  10億円

A 生命保険に加入していない場合
a 相続税   3億5,440万円
b 差引財産  6億4,560万円
B 生命保険金1,500万円に加入した場合(一時払い保険料1,200万円)
a 相続税   3億4,840万円
b 生命保険金   1,500万円
c 差引財産  6億5,460万円
C 効果 900万円

このように、生命保険の非課税を活用すると、相続税が減り、その分、手取額が多くなるというメリットがあるのだが、このような効果を得るには、次の生命保険を活用する。

D 保険の種類
終身保険
E 契約形態
契約者:被相続人
被保険者:契約者と同じ
保険金受取人:相続人

この場合には、保険金を受け取った相続人は、課税対象とならないお金を受け取ることになる。

ロ 保険料を贈与する
生命保険の保険料を相続人に贈与して、相続人が被相続人に生命保険をかけるという方法がある。この場合に相続人が受け取る生命保険金は、相続税の対象にならず、一時所得として所得税の対象になるが、一般的に低い税負担で済むというメリットがある。相続財産が多い場合に活用する方法であるが、この場合には、次の生命保険を活用する。

A 保険の種類
長期の養老保険又は終身保険
B 契約形態
契約者:子供等相続人
被保険者:被相続人
保険金受取人:契約者

この保険の保険料は、被保険者の年齢が高齢になると高額になるので、その分、贈与税の負担も重くなってしまう。したがって、この保険を活用する場合には、できるだけ若い時期に実行しておく方がよい。なお、実行する場合には、通帳などで贈与があったことを明確にしておくこと、贈与契約書を作成しておくこと、贈与税が課税される場合は、きちんと申告をしておくといった点に注意が必要である。

ハ 受取人の指定
生命保険は受取人が指定されている場合は、その指定された受取人が保険金を受け取る。この生命保険の性格を活用して、納税資金を準備するという方法がある。この場合には、次の生命保険を活用する。

A 保険の種類
終身保険
B 契約形態
契約者:被相続人
被保険者:契約者
保険金受取人:納税負担者

こうして、納税に必要な額の保険(所得税の負担を考慮する必要あり)に加入しておけば、保険金を受け取った相続人は、その保険金でもって相続税を納められることとなる。

② 延納の活用
相続税の納税は、原則として金銭納付、それが無理なら延納、それでも無理な場合に物納が認められる。延納は、相続税の納期限までに金銭で納付することを困難とする事由がある場合に、その納付を困難とする金額を限度として年払いで認められる納付の特例である。延納の許可を受けるには、次の要件のすべてを満たさなければならない。

A 納付すべき税額が、10万円を超えていること
B 金銭で納付することが困難な事情があること
C 納付期限までに延納申請書を提出し、税務署長の許可を受けること

また、原則として延納する場合には、担保が必要であり、担保として提供できる財産は、次のものとされている。

A 国債、地方債
B 社債
C 株式及び投資信託又は貸付信託の受益証券
D 土地及び鉄道財団、鉱業財団等
E 建物、立木、船舶などで保険に付したもの
F 税務署長が確実と認める保証人の保証

なお、この場合の担保物件は、相続又は遺贈により取得した財産でなくてもよく、自己所有物件でも構わないことになっている。ただし、次のようなものは、担保として認められない。

A 共同相続人間で所有権の帰属について係争中であるもの
B 共有財産の持分
C 違法建築又は土地の違法利用のため建物の除去命令等が出されているもの
D 譲渡制限がある株式等

延納できる期間は、原則は五年であるが、不動産等の割合が大きい場合には、最長20年まで認められる。延納は、元金均等の年賦であり、かつ、利子税が課せられるため、延納税額が多額になる場合には、大きな負担となる。延納を予定する場合には、どの財産を担保にして、どうして返済していくかを検討しておかなければならないが、返済が難しいようであれば次の物納も検討しなければならない。

 

③ 物納の活用
相続税を、現金で、また延納で納められないという場合は、物納という手がある。しかし、物納は、金銭納付が困難な場合に特例的に認められるものであるから、金銭があるのに物納を申請することはできない。

物納できる財産は、相続又は遺贈により取得した財産(相続人の財産を物納してもらうことはできない)で、国内にあるものとされている。

具体的には、
A 自宅の底地
B 貸宅地の底地
C 借地権
D 耕作権の付いていない農地
E 棚卸資産である不動産
F 相続した財産により取得した財産
G 自社株
などがあるが、物納できる財産には次のような順位がある。
第一順位 国債、地方債、不動産、船舶
第二順位 社債、株式、証券投資信託、貸付信託の受益証券
第三順位 動産

この順位にしたがってでないと物納は認められない。つまり、物納に適する不動産があるのに自社株を物納することは許されないのだ。また、物納した財産は、原則として換金して納税に充てられるため、物納財産は、管理処分が適当なものでなければならない。

したがって、次のようなものは物納が認められない。
A 質権、抵当権その他の担保権の目的となっている財産
B 所有権の帰属等について係争中の財産
C 共有財産(ただし、共有者の全員が持分の全部を物納する場合はOK)
D 買戻し特約などの登記、所有権移転の仮登記がされている財産
E 売却できる見込みのない財産

非上場の株式の物納は、一定の時期に、買い戻すという条件付でなければ実務では認められない。
貸宅地の物納は、
A 隣地との境界がはっきりしている
B 貸地の範囲が明確である
C 賃料が世間相場並みである
D 土地の賃貸借契約書がある
という要件をクリアしなければならないが、借地人が物納することにつき、ウンと言わなければならない。

このように、物納するには、いろいろな制約があるので、生前遺産分割をするにあたってはどれぐらいの納税額になるのかを知り、それを納めるにはどの財産を物納するのか、その財産は物納ができる財産なのかどうかをよく検討しておかなければならない。

言うまでもないが、物納予定の財産を変に有効(?)活用して、たとえば、物納できる更地の上にマンションなどを建てるといったことをして、物納できるはずであった財産をできなくしてしまったということのないようにしておかなければならない。

(『続・生前遺産分割のすすめ』より抜粋)

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